セレン(Se)ってどんな役割なの?欠乏症や過剰症って?

はじめに

セレンという金属を知っていますか?
原子番号34の元素で広く自然界に存在していますが、実は人体の機能を保つためには必要な無機質(ミネラル)でもあります。

今回は、セレンの役割と、欠乏症・過剰症について解説していきます。

目次

セレンの働き
セレンの欠乏症
セレンの過剰症
セレン高濃度の医薬品で死亡事故

セレンの働き

セレンは、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)という酵素の活性中心を構成する役割を有しています。
この酵素は、簡単に言うと体の抗酸化をしてくれる酵素です。
具体的には、過酸化水素という有害な物質を、無害の水に変えてくれます。
過酸化水素がたまると、細胞を傷つけたり有害に作用を及ぼすので、それを無害化してくれる酵素です。

他にも、チオレドキシンレダクターゼ(Txnrd)、ヨードチロニン脱ヨウ素化酵素(DIO)、セレノプロテイン(Sel)、セレノリン酸合成酵素2(SPS2)などの酵素に利用されています。
こうした酵素の活性中心にセレンが利用されているので、セレンが不足してしまうと、こうした酵素が働けなくなってしまい、さまざまな悪影響を及ぼします。

セレンの欠乏症

セレンは通常欠乏しないとされていますが、中国の一部の地域でセレンの欠乏症が頻発したことがあります。
その理由は、土壌に含まれているセレンの量が少なかったからとされています。

また、セレンを含有していない経腸栄養剤・ミルクを使用する場合にも、適宜補給をしないとセレン欠乏症になってしまいます。
日本で欠乏症になるのは、こっちのケースです。

欠乏症として、心筋症、不整脈、筋痛症、筋炎、溶血、細胞性免疫障害、爪の異常、毛髪の異常、赤血球の形態異常、貧血を引き起こすことがわかっています。
ときに、欠乏により死に至ることもあります。

セレンの過剰症

セレンを多く取りすぎてしまうと、脱毛や嘔吐、脱力感などの症状が現れます。
普通に食事をしていれば過剰に取りすぎることはほぼないですが、サプリメント等で追加でセレンを摂取してしまうと、過剰症の恐れがあります。

過剰症の症状として、嘔気,嘔吐,腹痛,吐血,急性腎不全,胃炎,洞頻脈,尿細管壊死,高ビリルビン血症,心電図異常があります。
神経系の障害や内臓障害を引き起こすことがわかっています。

セレン高濃度の医薬品で死亡事故

京都大学医学部付属病院(京都市)は3日、外来通院していた60代の女性に誤って高濃度の薬剤を輸液させ、女性が死亡したと発表した。同病院は記者会見で「調剤ミスと考えている」と説明した。
同病院によると、女性は9月26日夕、同病院が処方したセレンの入った製剤を自宅で輸液していたが、背中に痛みがあり、27日朝に来院した。救命処置をしたが、原因が分からないまま数時間後に死亡した。
引用:高濃度薬剤投与で女性死亡=調剤ミスか-京大病院

現在のところセレンを含んだ医薬品は市場には出回っていないので、院内製剤(病院内で調整している薬)で過誤があったのだと思われます。
保管されていた薬剤を調べたところ、本来の738倍の濃度のセレンが含有されていたとのことなので、おそらくは、秤量単位の確認ミスではないかと思います。

セレン注射液(50μg/ml)の調製は、亜セレン酸ナトリウム・五水塩Na2SeO3・5H2O(メルクジャパン)66.6mgを注射用蒸留水で溶解し、全量400mlとした。0.22μmのミリポアフィルターでろ過し、アンプルに充填、熔閉した。滅菌は121°Cで20分間高圧蒸気滅菌した。
引用:院内製剤セレン注射薬の品質試験

ネット上で公開されていた、セレン注射薬の調整方法です。
この作り方では、セレン含有化合物を66.6mgはかりとるとありますが、これを66.6gと間違えたようなミスの可能性が考えられます。

とはいえ、このmgとgの秤量ミスは、そもそも試薬瓶にそんなに入ってないだろうって思うので、実際はμgとmgのミスなのかなと思います。

なんにせよ、薬剤師の確認不足、ダブルチェック体制の不備、完成品のチェックがおろそかだったなど、さまざまな原因により、この事件が生じてしまったのでしょう。

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