はじめに
日本で起こった4大公害(水俣病・第二水俣病・四日市ぜん息・イタイイタイ病)についてまとめました。
工業が発展していくに伴って、周辺地域の環境汚染を考えず、利益を追求した結果ですので、今後こういうことが絶対におきないように知識として知っておきたいところです。
目次
公害とは?
水俣病
第二水俣病
四日市ぜんそく
イタイイタイ病
四大公害を経て策定された法律・決まり事
まとめ
公害とは?
公害とは工場からだされる排水や排気などによって、下記にあげる問題が生じて、その結果、人の健康や日常生活に被害が生じることと、環境基本法では定められています。
- 大気汚染
- 水質汚濁
- 土壌の汚染
- 騒音
- 振動
- 地盤沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く)
- 悪臭
一見すると環境問題と変わらないのでは?という感じもしますが、環境問題との違いは環境問題は個人の生活(ゴミや生活排水など)によって引き起こされるのに対して、公害は企業の活動によって引き起こされる点で異なります。
また、追って紹介する4大公害については、企業が意図的に公害を隠そうとしたりするなど、企業犯罪ともいうべき企業のモラルの欠如によって多大な悪影響を及ぼしました。
それでは、4大公害病について、その発生地と症状、原因を紹介していきます。
水俣病
発生地
熊本の水俣湾
発生年
1953年ごろ
患者数
約3000人
暴露経路・原因物質
原因物質であるメチル水銀が含まれた魚介類を摂取することで発症しました。
メチル水銀は、アセトアルデヒドという化合物を生成する際の副産物として生成された物質です。
アセトアルデヒドは、酢酸エチルなどの有機溶媒の原料として利用されるなど、結構な量が生産されています。
メチル水銀を未処理のまま排水として排出されてしまったことで、主に魚介類に蓄積し、それを摂取することで人に影響を与える事態となりました。
メチル水銀は体内に取り込まれると、脳の神経細胞がダメージを受けてしまいます。今日の医療では、治療する方法がありません。
余談ですが、最初この病気を発症したのは、ネコとされています。
魚介類を多く食べるネコは、真っ先にメチル水銀に毒されてしまったのでしょう。
この水俣病の企業・国全体として反省しなくてはいけないのは、この病気の原因が【メチル水銀】であると分かったのが、1963年と発生から10年くらいたってしまってからな点です。
1959年には、水銀が怪しいとされていたのですが、化学工業界・原因企業がそれを否定し、混迷のなかで原因が探りきれなかったという経緯があります。
しかも、1963年にメチル水銀であると突き止められたにもかかわらず、生産を止めることができず、被害が拡大したというのも、大いなる反省すべき点といえます。
主な症状
主な症状としては、視野狭窄・言語障害・手足の震え・しびれ・運動障害等の中枢神経障害(ハンター・ラッセル症候群)を引き起こしました。重症度に応じて多彩な症状を来し、死に至った例も報告されています。
より具体的な症状としては、触れていることや熱いものや冷たいものの感覚がわからない(感覚障害)、箸を持つ手がふるえたり歩くとふらついたりする(運動失調)などの症状が現れます。
また厄介なことに、メチル水銀は胎盤を通過してしまうため、妊娠中の女の人がメチル水銀に暴露された場合でも、胎児に影響を与え、胎児性の水俣病というのも報告されています。
第二水俣病
発生地
新潟の阿賀野川流域
発生年
1965年ごろ
患者数
約1000人
暴露経路・原因物質
水俣病と同じく、メチル水銀が原因となります。
主な症状
水俣病と同じです。
ただし、胎児性水俣病は、水俣病のときよりも少ない発症数で抑えることができました。
というのも、第二水俣病のときには、メチル水銀であろうとすぐに断定でき、メチル水銀が体に多く残っている女性には、妊娠をしないように指導するという策が取られたためです。
四日市ぜんそく
発生地
三重の四日市
発生年
1960年代
患者数
約2000人
暴露経路・原因物質
石油コンビナートの排煙に含まれていた二酸化硫黄(別名:亜硫酸ガス)という物質を吸ってしまうことにより生じました。硫黄分を多く含んだ石油を燃やすことにより生じます。
二酸化窒素は無臭のため、原因として気づかれにくかったです。
現在では、排煙から二酸化硫黄、その他有害物質を取り除く処理を行う工夫がされています。
主な症状
主な症状としては、二酸化硫黄による刺激を受けて生じるぜん息・気管支炎・閉塞性肺疾患などの呼吸器症状があります。
症状がひどく、呼吸困難により死に至ったケースもあります。
治療法としては、喘息治療に準拠し、炎症を鎮めるステロイド薬や気管支を拡張させる効果のあるβ2刺激薬、テオフィリン徐放製剤などが用いられます。
イタイイタイ病
発生地
富山の神通川流域
患者数
約200人
暴露経路・原因物質
亜鉛の精錬所から排出されたカドミウムという物質を含んだ水を用いて栽培した米などの農作物を摂取することで、発症しました。
カドミウムは骨軟化症や腎臓の機能を破壊する作用を持つことで知られています。
というのも、カドミウムはまず腎臓の機能を破壊しはじめることに起因します。腎臓は尿の排泄だけではなく、カルシウムを腸から吸収するのを助ける成分であるビタミンDを生成することでも知られています。
そのため、カルシウムを血中に取り込めなくなり、代わりとして骨を溶かすことで不足したカルシウムを補充しようとします。
その結果、骨がもろくなってしまい、少し動いただけで骨折してしまうような状態になってしまいます。
ビタミンDの外部からの補給が、この症状を和らげる方法とされていましたが、その当時ビタミンDは高級な代物だったため、服用できるような人はごくわずかでした。
また、そもそもの原因である腎臓の破壊は食い止めることができないので、やはり骨軟化症をおこしてしまう人もいたようです。
主な症状
主な症状は、腎臓の機能が破壊されることによる尿の異常(多尿・頻尿)やのどの渇きが初期症状としてあり、進行すると骨が溶け出すようになります。
骨が溶けてしまうと、立ち上がろうにも力が入らない等の症状が起きて、さらに進行するとくしゃみ等の軽い衝撃でも骨が骨折するといった症状が起きます。
この病気の名前は、そこらじゅう骨折することで患者が「イタイイタイ」と言い続けてしまうことに由来しています。
四大公害を経て策定された法律・決まり事
四大公害が発生した段階では、それを取り締まる法律がほぼ無いに等しい状態でした。
その結果、行政の対応が遅れてしまい、被害を拡大させてしまったともいえます。
そのため、こうした大規模な公害病をおこさせないために【公害対策基本法】が1967年に制定されました。
この法律では、事業者・国・地方公共団体(市町村など)・住民の責務を明確にし、公害に関連する検査値に環境基準を設定し、その基準を守るようにすることを定めたものです。
こうした基準が策定されたことによって、周りの環境が汚れようとも、利益だけ追及すればよいという公害をもたらす考え方を押さえつけることができるようになりました。
公害対策基本法はその後、1993年に自然環境保全法と合わさり、環境基本法に姿を変えて、今日に至っています。
まとめ
公害は、産業が発展するにつれて生じてきた問題です。
排出される工業用水等に問題となる化合物が含まれていることで生じてしまいます。
現在は、その教訓を活かして、排出される排水や煙等に排出基準が設けられ、その基準を守るよう事業所に義務づけられています。
経済発展に重きを置いてしまい、環境への配慮・人に対する配慮がなされなかった時代を反省して、上手く経済発展させたいですね。
コメント
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すごくわかりやすかったです
ありがとうございます!!