炭水化物がエネルギーになるまで。

米や小麦などの穀物に多く含まれるエネルギー源である炭水化物は、食べた後、体内でどのようにしてエネルギーとして活用されるのでしょうか?

①炭水化物とは
 炭水化物というのは糖質とも言って、単糖(グルコース・ガラクトース・フルクトースなど)が結合した有機化合物です。
 結合の仕方、単糖の種類によって様々な組み合わせを作ることが出来るので、無数の炭水化物の種類が存在します。
 主に植物が光合成することによって作りだしているのですが、ヒトを始めとした動物の多くは作り出すことが出来ないので、外部から摂取して活用しています。
 1gあたり4kcalのエネルギー源として用いられるほか、骨格を形作る要素にも用いられます。
 ヒトでは、エネルギーの50%程度を炭水化物から得ていて、その多くはデンプン(グルコースがたくさん結合した炭水化物)です。

②炭水化物の消化・吸収
 食べ物として摂取した炭水化物は、唾液や膵液に含まれるアミラーゼ・マルターゼ等の消化酵素により、そのほとんどが単糖にまで分解されます。
 この酵素の能力には、人種差・個人差があり、例えば乳糖(牛乳に含まれている、単糖のガラクトースとグルコースが結合した二糖類の一つ)を分解する酵素ガラクトシダーゼは日本人の成人でその活性が弱く、そのため牛乳を飲んでお腹がゆるくなってしまう人が多いと言われています。
 炭水化物が分解されてできた単糖は小腸で輸送体により吸収され、門脈(小腸から肝臓につながっている血管)に入り肝臓に向かいます。

③エネルギー源の貯蔵
 食べてる時だけしかエネルギーを作ることができないという事態を避けるために、エネルギー源を貯蔵するシステムが体内には備わっています。
 炭水化物の多くはグルコースに分解されるので、グルコースの量を軸に調節する機構が体内には備わっています。
  ・血液中にグルコースがたくさんあると、膵臓からインスリンという物質が放出されます。インスリンは、筋肉や肝臓に対して、グルコースを取り込んでグリコーゲンなどの貯蔵に適した物質に変えるように促します。
  ・反対に、血液中のグルコースがエネルギーとして使われて減ってくると、膵臓からグルカゴンという物質が放出され、肝臓がグリコーゲンからグルコースを作り血液中に放出します。
  ・このシステムによって、空腹時でも血液中には一定のグルコースが流れている状態をつくることが出来ます。
 脳はエネルギー源としてグルコースしか用いることが出来ないので、大事な脳を栄養不足にさせないためにも、血中のグルコースの濃度を一定に保つのは、重要であると考えられます。
 
④エネルギーの生成(解糖系・クエン酸回路・電子伝達系)
 グルコースからエネルギーを取り出す反応はいくつかあるのですが、今回は解糖系・クエン酸回路・電子伝達系という代表的な系について書いていきます。
 
 グルコースは、解糖系・クエン酸回路・電子伝達系を経て、二酸化炭素と水とエネルギーへと変換されるのですが、まず初めに、グルコースは細胞質基質にて解糖系を経てピルビン酸・ATP・NADHという物質に代謝されます。そのうちピルビン酸はアセチルCoAへと変換されたのち、ミトコンドリアにあるクエン酸回路に入りNADHやFADH2などの物質にエネルギーが渡され、グルコース自身は水と二酸化炭素に代謝されます。
 NADHやFADH2などの物質は、ミトコンドリアの膜に存在する電子伝達系へと入り、ATPという物質に変換されます。
 エネルギーを体内で利用するために「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質を用います。このATPというのは、どのような仕事(筋肉を動かす・脳からの命令を送るなどなど)にも用いることが出来るので、「エネルギーの通貨」とも呼ばれています。
 
 
このように、摂取した炭水化物は長い道のりを経て、エネルギーとして活用されています。
食品に含まれている多くの栄養素は、摂取すると生物が使いやすいような形にするために、様々な酵素を用いて代謝されていきます。
栄養素を自分で利用できる形にする反応は、神秘的なものを感じます笑 今後も紹介していきたいと思います。
 

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