糖尿病の治療薬には様々なタイプのものがあります。今回は薬効別に治療薬をまとめて紹介していきたいと思います。
ちなみに、2型糖尿病の治療薬について主に紹介していきます。
糖尿病治療薬の作用点
一言に糖尿病治療薬と言っても、様々なタイプが存在します。上の図は代表的な糖尿病治療薬についてまとめた図になります。インスリンの分泌は、血中のグルコースが膵臓β細胞に取り込まれることで生じます。
生活習慣病などで生じる2型糖尿病は、
- 膵臓β細胞からのインスリン放出が少ない場合
- 骨格筋、脂肪細胞などにおいてインスリンの感受性が低下してしまっている場合
のどちらかもしくはその両方によって生じるとされています。
なので、治療方法としては、
- 膵臓β細胞からのインスリン放出を促進させる
- インスリンを外部から補給する
- 骨格筋、脂肪細胞などにおいてインスリンの感受性を改善させる
- そもそもグルコースの吸収量を減らす
などが考えられます。
では、詳細に薬の作用について説明していきたいと思います。
糖尿病薬の薬効別解説
α-グルコシダーゼ阻害薬
α-グルコシダーゼ阻害薬は、アカルボース(商品名:グルコバイ®)、ボグリボース(商品名:ベイスン®)、ミグリトール(商品名:セイブル®)などがあります。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、消化管内に存在するα-グルコシダーゼという酵素の活性をブロックする働きを持ちます。α-グルコシダーゼというのは、デンプン等が分解して生じた二糖類をグルコース(単糖)に分解する働きを持つ酵素です。この酵素をブロックすることで、グルコースの生成を防ぎ、グルコースの絶対的な吸収量を下げることで、糖尿病を改善していこうという薬です。ちなみに、二糖類のままでの吸収効率は非常に悪いです。
また、食物が消化管内に入ってくる前に、α-グルコシダーゼを阻害しておく必要があるので、このタイプの薬は基本的に食直前で用いられます。
糖尿病薬には副作用として低血糖症状を有するものが多いです。このタイプの薬で冷や汗をかくなどの低血糖症状を起こした場合は、ショ糖(二糖類)ではなくてブドウ糖(単糖)を補給する必要があります。
インスリン製剤
インスリン製剤は、ノボラピッド®、ヒューマログ®、ノボリン®、ランタス®などがあります。
インスリン製剤の特徴としては、現在のところすべて注射薬という点があげられます。インスリンは、ペプチドなので経口で投与しても消化酵素で分解されてしまい薬効が失われてしまうためです。注射薬ですが、患者による自己注射が認められています。
インスリン製剤は、その薬効の持続時間によって、超速効型、速効型、混合型、中間型、持効型があり、糖尿病のタイプによって様々な種類のインスリン製剤を組み合わせて使用することが多いです。
なお、間違ったイメージとして、インスリン製剤を使い始めたらもう末期であるようなイメージを持たれることがあります。ですが、これは誤りで早期からインスリン製剤を積極的に使用することで、膵臓のインスリン分泌機能を休ませられるなどのメリットが大きいことが分かり、一般的な治療方針としては早期からのインスリン製剤使用が浸透しつつあります。
スルホニル尿素薬
スルホニル尿素薬は、グリメピリド(商品名:アマリール®)、グリベンプラミド(商品名:オイグルコン®)などがあります。
スルホニル尿素薬は、膵臓β細胞に存在するSU受容体を刺激することで、インスリンの放出を促進させる効果がある薬です。スルホニル尿素構造を有しているのが特徴です。
速攻型食後血糖降下薬
速攻型食後血糖降下薬は、ナテグリニド(商品名:スターシス®)、ミチグリニドカルシウム(商品名:グルファスト®)などがあります。
スルホニル尿素薬と同じように、膵臓β細胞に存在するSU受容体を刺激することで、インスリンの放出を促進させる効果がある薬です。ですが、スルホニル尿素構造は有していません。また、作用発現が速いのも特徴で、食直前で用いられます。
GLP-1アナログ製剤
GLP-1アナログ製剤には、リラグルチド(商品名:ビクトーザ®)、エキセナチド(商品名:バイエッタ®、ビデュリオン®)などがあります。
GLP-1とは、グルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-like peptide-1)の略で、食事を摂取した際に消化管から分泌される消化管ホルモンの一つです。膵臓β細胞のGLP-1受容体を刺激して、インスリンの分泌を促進する作用があります。注射剤ですが、患者による自己注射が認められています。日本では最近発売し始めた比較的新しい薬です。
DPP-4阻害薬
DPP-4阻害薬は、シタグリプチン(商品名:ジャヌビア®、グラクティブ®)、ビルダグリプチン(商品名:エクア®)、リナグリプチン(商品名:トラゼンタ®)などがあります。
DPP-4とは、Dipeptidyl Peptidase-4の略で、GLP-1などの消化管ホルモンを分解する酵素です。DPP-4を阻害することで、GLP-1の分解を防ぎインスリンの分泌を促進する作用があります。DPP-4阻害薬は経口で投与することが出来るので、GLP-1アナログ製剤よりも使いやすいと言えるでしょう。
その他
その他の糖尿病薬として、ビグアニド系薬のメトホルミン(商品名:メトグルコ®)、ブホルミン(商品名:ジベトス®)や、インスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾン(商品名:アクトス®)があります。
ビグアニド系薬は、膵臓β細胞からのインスリン分泌を促進する作用はないものの、インスリンの作用増強により血糖降下作用を持ちます。
インスリン抵抗性改善薬は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)を刺激することで、インスリン抵抗性を改善する作用を持ちます。
まとめ
様々な種類の糖尿病薬を紹介しましたが、2型糖尿病のまず初めの治療法は、運動療法と食事療法です。
まずは普段の生活を見直すことで、糖尿病が改善される例も多くありますので、健康的な生活を心がけましょう!薬物治療を始める際も、薬を飲めば運動しなくてもいいやという意識ではなく、運動療法と並行して薬物治療を行うようにすると良いでしょう。また、薬物治療の際には用法用量通りに服用するようにしてください。
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