徹底解説!プロトンポンプ阻害薬(PPI)ってどんな薬?

はじめに

逆流性食道炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍、ピロリ菌除菌のときに用いられるプロトンポンプインヒビター(PPI)について、その作用機序と効果効能、副作用などを解説していきます!
おそらく何かしらで一度は飲む薬かと思うので、参考にしてみてください。

目次

胃酸分泌の流れ
プロトンポンプインヒビターの作用機序
プロトンポンプインヒビターの効果・効能
プロトンポンプインヒビターの副作用
プロトンポンプインヒビターの種類
まとめ

胃酸分泌の流れ

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はじめに胃酸ってそもそもどのように分泌されるのか、から解説していきます。
ざっくり図にするとこんな感じです。

胃酸分泌が活性化する経路は、主に3つあります。

  1. 副交感神経から分泌されるアセチルコリンを、胃壁細胞のM3受容体で受け取り、細胞内伝達を経てプロトンポンプが活性化され胃酸分泌される経路
  2. G細胞から分泌されるガストリンを、胃壁細胞のG受容体で受け取り、細胞内伝達を経てプロトンポンプが活性化され胃酸分泌される経路
  3. クロム親和性細胞様細胞(ECL細胞)から分泌されるヒスタミンを、胃壁細胞のH2受容体で受け取り、細胞内伝達を経てプロトンポンプが活性化され胃酸分泌される経路

ちなみに、プロトンというのは、水素イオン(H+)のことで、酸性を作り出す元になる物質です。

G細胞というのは、胃の幽門部(十二指腸側の胃の部分)に存在する細胞で、物理的な刺激を受け取るとガストリンを分泌する働きがあります。つまり、胃の中に何か入ってきたら、胃酸分泌能を高めて、消化・殺菌効果をマックス!にする役割を果たします。

クロム親和性細胞様細胞(ECL細胞)は、ヒスタミンを細胞内に貯蔵している細胞で胃に存在しています。副交感神経から放出されるアセチルコリンや、G細胞から放出されるガストリンの刺激を受けて、ヒスタミンを放出し、胃酸分泌をさらに促す効果があります。

プロトンポンプインヒビターの作用機序

プロトンポンプインヒビターは、その名前の通り、プロトンポンプを阻害する効果を発揮します。

プロトンポンプとは、胃の壁細胞の管腔側に存在するポンプ機能をもったタンパク質で、水素イオン(H+)を管腔側に汲み出す代わりに、管腔側からカリウムイオン(K+)を貰い受ける働きを持ちます。
この濃度勾配に逆らった動きをするために、ATP(アデノシン三リン酸)が用いられます。ATPは「エネルギーの通貨」とも呼ばれ、筋肉動かしたり、濃度勾配に逆らったイオンの動きを作り出したりするときに利用されます。

プロトンポンプインヒビターの作用機序は、大きく2つに分類されます。

胃酸による活性化が必要なタイプ

タケプロン(ランソプラゾール)、オメプラール・オメプラゾン(オメプラゾール)、パリエット(ラベプラゾール)、ネキシウム(エソメプラゾール)が該当します。

胃酸により、活性体であるスルフェンアミド体に変換された後に、プロトンポンプのSH基とS-S結合を形成し、プロトンポンプの働きを阻害。

胃酸による活性化が必要でないタイプ

タケキャブ(ボノプラザン)が該当します。
胃酸による活性化を必要とせず、カリウムイオン(K+)とプロトンポンプの結合場所の取り合いをして阻害。
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker:P-CAB)と呼ばれる性質を持つ。
詳しくはこちら ⇛ ピロリ菌除菌、逆流性食道炎の治療薬【タケキャブ】ってどんな薬?

プロトンポンプインヒビターの効果・効能

プロトンポンプインヒビターは、その強力な胃酸分泌抑制効果から、胃酸によって傷ついてしまうことが原因の病気に対して用いられます。
胃酸によって傷ついてしまうことが原因の病気は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などがあります。

また、ピロリ菌除菌の際の補助薬として用いられます。
ピロリ菌除菌に用いる抗生物質が、酸性条件下だと効きが悪くなってしまうので、酸の分泌を抑える目的で用いられます。
ピロリ菌除菌については、こちらをご参照ください ⇛ 胃がんの原因となるピロリ菌を胃から消す除菌療法について

◯胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制

◯下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
引用:タケキャブ錠インタビューフォーム

プロトンポンプインヒビターの副作用

副作用として多く報告されているのは、下痢・肝機能異常があります。
服用していて、普段と違う体調になったということがあれば、医師・薬剤師に相談するようにしてください。

また、プロトンポンプインヒビターは、その胃酸分泌抑制効果からガストリンの分泌を上げてしまうという副作用があります。
人間の体は不思議なもので、G細胞がPPI服用下で胃の酸性が弱いことを感じ取り、ガストリン足りてないんじゃないかと勘違いして、ガストリンを出すように張り切ってしまうためです。
すると、服用を中止した後に急に胃酸分泌が盛んになってしまうことがあり、逆流性食道炎となり、ゲップやむかつきが生じることがあります。

プロトンポンプインヒビターの種類

現在発売されているプロトンポンプインヒビターは下記の通りです。

  • 商品名:タケプロン(一般名:ランソプラゾール)
  • 商品名:オメプラール・オメプラゾン(一般名:オメプラゾール)
  • 商品名:パリエット(一般名:ラベプラゾール)
  • 商品名:ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)
  • 商品名:タケキャブ(一般名:ボノプラザン)

まとめ

プロトンポンプ阻害薬は、胃酸の分泌を担うプロトンポンプ(H+-K+ATPase)を阻害することで、胃酸分泌を抑制する効果を持つ薬です。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の治療や、ピロリ菌除菌に用いられます。
副作用として多く報告されているのは、下痢や肝機能障害です。

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