【プレジコビックス配合錠(ダルナビル・コビシスタット)】って?効果効能・副作用を紹介!

はじめに

プレジコビックス配合錠は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症の治療薬です。
HIV感染してしばらくすると(ヒトにもよるが、1~10年程度)、AIDS(後天性免疫不全症候群)を発症し、特段の治療を行わなければ2年程度で死に至ります。
HIV感染してから、AIDSの発症を遅らせるために、ウイルスの活動を抑制するのがポイントであり、そのための薬が数多く開発されてきました。

今回は、そんなHIV感染症治療薬のプレジコビックス配合錠の効果効能、副作用や注意点について紹介したいと思います。

目次

プレジコビックス配合錠ってどんな薬?
プレジコビックス配合錠ってどうやって効くの?
プレジコビックス配合錠の用法・用量
プレジコビックス配合錠の副作用
プレジコビックス配合錠の注意点
まとめ

プレジコビックス配合錠ってどんな薬?

プレジコビックス配合錠は、ダルナビルとコビシスタットが配合されている薬です。
ダルナビルはプロテアーゼ阻害剤、コビシスタットはダルナビルの作用を高める薬物動態学的増強因子(ブースター)として働きます。詳しくは後ほど。

日本においては、2017年1月に販売が開始されました。

【効 能・効 果】
HIV感染症

《効能・効果に関連する使用上の注意》
1. 以下のいずれかのHIV感染患者に使用すること。
① 抗HIV薬の治療経験がない患者
② ダルナビル耐性関連変異を持たない抗HIV薬既治療患者
2.本剤による治療にあたっては、患者の治療歴及び可能な場合には薬剤耐性検査(遺伝子型解析あるいは表現型解析)を参考にすること。
3.小児HIV感染症に対しては、本剤投与による有効性及び安全性が確立していない。
引用:プレジコビックス配合錠 添付文書

HIV感染症に用いられるのですが、使用できる患者さんに条件があります。
過去にHIV薬による治療経験がない方、もしくはダルナビル耐性がない場合に限られます。
というのも、HIVは変異が起きやすく、比較的簡単に抗ウイルス薬に対して耐性が作られてしまいます。

抗ウイルス薬の使用経験がない場合は、たぶん耐性はないだろう。
違う場合は、ちゃんと効くかどうか検査してね。という意味です。

また、小児に対しては、有効性及び安全性を検証しきれていないので、使用しないこととされています。

プレジコビックス配合錠ってどうやって効くの?

2つの成分が含まれているので、それぞれの作用について紹介します。

ダルナビル

ダルナビルは、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)プロテアーゼの2量体化及び酵素活性を阻害します。
すでにこの成分単体の薬はプリジスタ・プリジスタナイーブとして、日本で販売されています。

HIVに感染した細胞では、HIVの増殖を助けるための遺伝子・タンパク質作りが活発に行われます。
そのなかに、Gag蛋白質・Pol蛋白質というのがあります。
Gag蛋白質はMA・CA・NCと呼ばれるウイルスの周りを覆う殻を構成する成分、Pol蛋白質はRT・INなどのウイルス特異的な酵素のもととなります。

Gag蛋白質・Pol蛋白質が結合している、Gag-Polポリ蛋白質はウイルスの構成成分の多くを持っているタンパク質ですが、ダルナビルはこのGag-Polポリ蛋白質の切断を阻止することで、ウイルスの構成成分を機能させなくさせ、ウイルスの増殖を抑制させます。

タンパク質を切断する酵素のことをプロテアーゼと呼ぶのですが、もちろんヒトも保有しています。
ですが、ヒトのプロテアーゼに対しては、その機能を阻止する作用は認められませんでした。
つまり、HIV-1のみの増殖を阻止することができます。

コビシスタット

コビシスタットは、ダルナビルと異なり、HIVに直接的に作用する薬ではありません。
ダルナビルの効果を高める役割を果たします。

ダルナビルは、CYP3Aと呼ばれる酵素によって活性が無効化されます。
コビシスタットは、CYP3Aの働きを抑えることで、活性の無効化を阻止し、ダルナビルの効果を継続させることができます。

このような作用をもつ薬を、薬物動態学的増強因子(ブースター)と呼びます。

プレジコビックス配合錠の用法・用量

【用 法・用 量】
通常、成人には1回1錠(ダルナビルとして800mg、コビシスタットとして150mgを含有)を1日1回食事中又は食直後に経口投与する。投与に際しては、必ず他の抗HIV薬と併用すること。

《用法・用量に関連する使用上の注意》

1. HIV薬による治療経験があり、ウイルス学的抑制が得られていない患者には薬剤耐性遺伝子型検査の実施
が推奨されるが、遺伝子型検査が行えない場合には、以下のとおりとする。
・HIVプロテアーゼ阻害剤による治療経験のある患者には、本剤を使用すべきでない。
・HIVプロテアーゼ阻害剤による治療経験のない患者には本剤の使用が可能である。
2. 本剤は、ダルナビル エタノール付加物及びコビシスタットを含有する配合剤であるので、ダルナビルエタノール付加物及びコビシスタットを含有する製剤と併用しないこと。また、コビシスタットと同じ薬物動態学的増強因子であるリトナビルを含有する製剤とも併用しないこと。
3. 本剤による治療は、抗HIV療法に十分な経験を持つ医師のもとで開始すること。
4. 本剤と他の抗HIV薬との併用療法において、因果関係が特定できない重篤な副作用が発現し、治療の継続が
困難であると判断された場合には、本剤若しくは併用している他の抗HIV薬の一部を減量又は休薬するので
はなく、原則として本剤及び併用している他の抗HIV薬の投与をすべて一旦中止すること。
引用:プレジコビックス配合錠 添付文書

プレジコビックス配合錠は、1日1回食事中もしくは食直後に服用します。
食事中の用法は珍しいですよね。
空腹時投与と比較して、食事とともに服用したほうが、吸収量が多かったという実験結果があるためです。

また、HIV治療は多剤併用が原則です。
そのため、プレジコビックス配合錠単体ではなくて他の抗HIV治療薬とともに服用します。

プレジコビックス配合錠の副作用

副作用
HIV感染患者を対象とした海外第Ⅲ相試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)は313例中208例(66.5%)に認められた。主な副作用は、下痢87例(27.8%)、悪心72例(23.0%)、発疹49例(15.7%)、頭痛38例(12.1%)であった。
引用:プレジコビックス配合錠 添付文書

副作用として頻度高いと報告されているのは、下痢や悪心と行った消化器症状、過敏症の一種発疹や頭痛です。
抗ウイルス薬全般的に、副作用の頻度は高いので、それぞれの症状にあった対応(追加の薬など)をする必要があります。

服用している方で、体調悪化など違和感を感じるようであれば、はやめに医師に相談するようにしましょう。

プレジコビックス配合錠の注意点

プレジコビックス配合錠は、副作用が比較的多くみられる薬です。
なので、体調悪化あれば、はやめに医師に申し出るようにしましょう。

また、併用してはいけない薬がかなり多くあります。
服用したい薬・サプリメントがある場合は医師薬剤師に必ず相談しましょう。

プレジコビックス配合錠を服用してはいけない方。

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2)リファンピシン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトイン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort:セント・ジョーンズ・ワート)含有食品、トリアゾラム、ミダゾラム、ピモジド、シンバスタチン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、バルデナフィル、シルデナフィル(レバチオ)、タダラフィル(アドシルカ)、ブロナンセリン、アゼルニジピン、アスナプレビル、バニプレビル、グラゾプレビル、リバーロキサバン、チカグレロルを投与中の患者
3)腎機能あるいは肝機能障害患者で、コルヒチンを投与中の患者
4)低出生体重児、新生児、乳児、3歳未満の幼児
引用:プレジコビックス配合錠 添付文書

服用してはいけない方として、アレルギー反応やアナフィラキシーショックといった過敏症を起こしたことがある方。
また、一緒に服用してはいけない薬があるので、それを服用している方。
3歳未満の方には使用することができません。

プレジコビックス配合錠と一緒に服用してはいけない薬。

下記の薬は一緒に服用することができません。
OTC・ハーブ茶に含まれているセイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)も併用してはいけない薬に含まれているので、注意が必要です。

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
リファンピシン(アプテシン、リファジン等)
フェノバルビタール(フェノバール等)
フェニトイン(アレビアチン等)
ホスフェニトイン(ホストイン)
カルバマゼピン(テグレトール)
セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
ダルナビル及びコビシスタットの血中濃度が低下し、本剤の効果が減弱するおそれがある。 スタットの血中濃度が低下し、本剤の効果が減弱するおそれがある。
これらの薬剤のCYP3A誘 導 作 用により、ダルナビル及びコビシスタットの代謝が促進される。
トリアゾラム(ハルシオン)
ミダゾラム(ドルミカム)
これらの薬剤の血中濃度上昇により、過度の鎮静や呼吸抑制等の重篤な又は生命に危険を及ぼすような事象が起こる可能性がある。 ダルナビル及びコビシスタットのCYP3A阻害作用により、これらの薬剤の代謝が阻害される。
ピモジド(オーラップ) ピモジドの血中濃度上昇により、不整脈等の重篤な又は生命に危険を及ぼすような事象が起こる可能性がある。
シンバスタチン(リポバス) シンバスタチンの血中濃度上昇により、横紋筋融解症が起こる可能性がある。
エルゴタミン(クリアミン)
ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット)
エルゴメトリン(エルゴメトリンマレイン酸塩)
メチルエルゴメトリン(メテルギン等)
これらの薬剤の血中濃度上昇により、末梢血管痙縮、虚血等の重篤な又は生命に危険を及ぼすような事象が起こる可能性がある。
バルデナフィル(レビトラ)
シルデナフィル(レバチオ)
タダラフィル(アドシルカ)
これらの薬剤の血中濃度を上昇させるおそれがある。
ブロナンセリン(ロナセン) ブロナンセリンの血中濃度が上昇し、作用が増強するおそれがある。
アゼルニジピン(レザルタス配合錠、カルブロック) アゼルニジピンの血中濃度が上昇し、作用が増強するおそれがある。
アスナプレビル(スンベプラ、ジメンシー配合錠) アスナプレビルの血中濃度が上昇し、肝臓に関連した有害事象が発現し、また重症化する可能性がある。
バニプレビル(バニヘップ) バニプレビルの血中濃度が上昇し、悪心、嘔吐、下痢の発現が増加する可能性がある。
グラゾプレビル(グラジナ) グラゾプレビルの血中濃度が上昇する可能性がある。 ダルナビル及びコビシスタットのCYP3A及びOATP1B阻害作用により、グラゾプレビルの血中濃度が上昇することがある。
リバーロキサバン(イグザレルト)
チカグレロル(ブリリンタ)
これらの薬剤の血中濃度が上昇し、作用が増強されることにより、出血の危険性が増大するおそれがある。 ダルナビル及びコビシスタットのCYP3A阻害作用又はP糖蛋白阻害作用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇することがある。

引用:プレジコビックス配合錠 添付文書

まとめ

プレジコビックス配合錠は、HIV感染症の治療薬として用いられます。
2つの有効成分、ダルナビル・コビシスタットが含まれており、ダルナビルはHIV-1のウイルス増殖を抑制する効果があり、コビシスタットはその作用を増強する目的で用いられます。

一緒に服用してはいけない薬が数多くあるので、お薬手帳を活用するなどして、プレジコビックス配合錠を服用していることを医療関係者に伝えるとともに、自己判断で他の薬を服用しないようにしましょう。

医師の指示どおり継続的に服用するようにしましょう。

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