はじめに
トラクリアは、肺動脈性肺高血圧症の治療・全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制に用いられる薬です。
肺動脈性肺高血圧症・全身性強皮症に伴う皮膚潰瘍ともに、日本では希少疾患に指定されています。
すでにジェネリックも販売されており、ボセンタン錠62.5mg「メーカー名」の名前で販売されています。
今回は、トラクリアについて、その効果効能、副作用や注意点について紹介していきます。
目次
トラクリアってどんな薬?
トラクリアってどうやって効くの?
トラクリアの用法・用量
トラクリアの副作用
トラクリアの注意点
まとめ
トラクリアってどんな薬?
トラクリアは、肺動脈性肺高血圧症の治療薬として、2005年6月に販売が開始されました。
その後、2015年8月に全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制についても、効能追加し用いられることになりました。
【効能・効果】
肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスⅡ、Ⅲ及びⅣ)
全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制(ただし手指潰瘍を現在有している、または手指潰瘍の既往歴のある場合に限る)<効能・効果に関連する使用上の注意>
肺動脈性肺高血圧症
⑴ 特発性又は遺伝性肺動脈性肺高血圧症及び結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症以外の肺動脈性肺高血圧症における有効性・安全性は確立していない。
⑵ 本剤の使用にあたっては、最新の治療ガイドラインを参考に投与の要否を検討すること。全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制既存の手指潰瘍に対する有効性は認められていない。
引用:トラクリア錠62.5mg 添付文書
肺動脈性肺高血圧症
その名前の通り、肺動脈の血圧が異常に高くなってしまう病気です。PAHと略されて呼ばれることもあります。
肺動脈とは、心臓と肺を繋いでいる血管のうち、心臓から肺に向かう血管を指します。
肺動脈高血圧症になると、肺に血液がたまりがちとなり、肺から心臓に戻ってくる血液量が減少します。
最初のうちは、心臓が肺に血液を送ろうと頑張って拍動するのですが、だんだんとへばってきます。
その結果、心臓から肺へ血液を送りだす機能が弱まる(右心不全)、血液を全身に回す機能も弱まる(左心不全)が生じます。
具体的な症状としては、すぐに疲れる(易疲労性)・むくみ・息苦しさ・失神などの症状が生じます。
残念ながら、どうして肺動脈高血圧症になるのは明確にはわかっていません。
日本では、3000人弱の方がこの病気を患っています。
全身性強皮症
全身性強皮症は、SSCと略され、皮膚や内蔵が硬くなっていく病気です。
これも、原因は未だ解明されていませんが、免疫の異常・血管障害・線維化の3つの異常によって生じるとされています。
レイノー症状・皮膚硬化・線維化・逆流性食道炎・強皮症腎クリーゼなどが主な症状として現れます。
トラクリアってどうやって効くの?
トラクリアの有効成分ボセンタンは、エンドセリン受容体に結合することで効果を発揮します。
肺高血圧症の患者さんでは、エンドセリン-1(ET-1)の濃度が、肺組織と血液中に増加していることがわかっており、ETA並びにETB受容体を刺激することで、血管を収縮するのではないかと考えられています。
ボセンタンは、ETA並びにETB受容体に結合することで、エンドセリン-1の結合を食い止め、血管を収縮させないようにする効果があります。
また、全身性強皮症の手指潰瘍に関しても、エンドセリンが関係していると考えられており、血管収縮を抑え、壊死を阻止する効果があるとされています・
トラクリアの用法・用量
【用法・用量】
通常、成人には、投与開始から4週間は、ボセンタンとして1回62.5mgを1日2回朝夕食後に経口投与する。投与5週目から、ボセンタンとして1回125mgを1日2回朝夕食後に経口投与する。
なお、用量は患者の症状、忍容性などに応じ適宜増減するが、最大1日250mgまでとする。
引用:トラクリア 添付文書
トラクリアは、まず副作用の発現可否・効果の確認のために、1回1錠、1日2回朝夕食後から服用をスタートします。
5週間経過したあとに、副作用や効果を鑑みたうえで、1回2錠に増量します。
トラクリアの副作用
トラクリアの主な副作用は、頭痛・肝機能異常・倦怠感・筋肉痛・貧血などです。
肝臓に負担がかかる薬のため、肝機能を定期的に検査していく必要があります。
投与開始3ヶ月間は2週間に1回、それ以降は1ヶ月に1回実施していくことが望まれています。
肝機能の程度によっては、中止や減量などの措置を行います。
トラクリアの注意点
トラクリアの注意点として、一緒に服用してはいけない薬が設定されています。
なので、服用している薬は、一冊のお薬手帳にまとめておき、医師や薬剤師に受診時・薬をもらうときに見せるようにしましょう。
まとめ
トラクリアは、肺動脈性肺高血圧症の治療・全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制に用いられる薬です。
エンドセリンETA並びにETB受容体に結合することで、エンドセリンの結合をブロックし、血管が収縮するのを防ぎます。
その結果、高血圧を改善し、血管収縮にともなう潰瘍を抑制する効果があります。
服用に際しては、医師の指示どおり服用するようにしましょう。
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