はじめに
冬場になってくると流行し始めるインフルエンザ。
イナビルは、インフルエンザウイルスを殺す効果を発揮する薬です。
ただ、吸入薬で扱いがすこし難しいといったこともあります。
今回は、イナビルの効果効能、使い方、副作用・注意点について紹介していきたいと思います。
目次
イナビルってどんな薬?
イナビルってどうやって効くの?
イナビルの用法・用量
イナビルの吸入について
イナビルの副作用・注意点
イナビルと一緒に服用するのを注意したい薬
まとめ
イナビルってどんな薬?
イナビルは、有効成分ラニナミビルオクタン酸エステルで、インフルエンザの治療および予防に使用される薬です。
日本では、2010年10月に販売が開始されました。
【効 能 ・ 効 果】
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防〈効能・効果に関連する使用上の注意〉
治療に用いる場合は、抗ウイルス薬の投与が全てのA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療に必須ではないことを踏まえ、本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。
予防に用いる場合は、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。高齢者(65歳以上)
慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
代謝性疾患患者(糖尿病等)
腎機能障害患者
本剤はC型インフルエンザウイルス感染症には効果がない。
本剤は細菌感染症には効果がない。
引用:イナビル 添付文書
インフルエンザの原因となる、インフルエンザウイルスは、実はA型とB型とC型があります。
イナビルは、A型とB型のインフルエンザウイルスに効果がある薬で、C型には効果がありません。
病院でインフルエンザにかかっているかどうかの確認試験をするときに、型まで調べるのは、薬によっては効かない型があるためという理由もあります。
また、予防の目的でも用いることがあります。
同居人がインフルエンザに罹患してしまった場合、老人ホームや病院・薬局の医療従事者が予防で使用することがあります。
ただし予防に使用する場合、保険の適応外なので、すべて自腹で行う必要があります。
イナビルってどうやって効くの?
イナビルの有効成分である、ラニナミビルオクタン酸エステルは、ノイラミニダーゼと呼ばれるウイルス表面の物質に結合することで、宿主細胞からの子ウイルス放出を阻止することで、ウイルス増殖を抑える働きをします。
これだけだととても分かりにくいので、細かく順番に説明していきますが、そのまえに、そもそもウイルスってどうやって増殖するのでしょうか?
ちょっとそのあたり説明していきたいと思います。
ウイルスの感染・増殖
そもそもウイルスというのはどういうやつなのでしょうか?
ウイルスは、タンパク質の殻とその内部にDNAもしくはRNAを含んだ物質です。
他の細胞に感染することで、その細胞の機能を借り、自分自身を複製して増殖します。
その流れを順番に列挙していきましょう。
- 細胞表面のシアル酸とインフルエンザウイルスの殻表面のヘマグルチニン(HA)が結合する。
- 細胞内に取り込まれる。取り込まれた細胞を宿主細胞と呼ぶ。
- ウイルスの殻を溶かして、RNA(インフルエンザは遺伝情報伝えるのに、RNAを利用している)を細胞内に放出
- RNAは核に移行し、宿主細胞の機能を利用して、コピーRNAや殻を作らせる
- 殻の部品は、ゴルジ体と呼ばれる細胞内の組織に取り込まれ、加工され成熟する。
- 宿主細胞表面で、新しく作られたウイルスの部品が集まり、ウイルスを形成する
- 宿主細胞とウイルスの殻をつなぎとめている、シアル酸とヘマグルチニン(HA)の結合を、ノイラミニダーゼ(NA)が切断することで、ウイルスが放出される。
このようにして、ウイルスは宿主細胞の機能を有効活用して、自分自身を増殖させます。
イナビルの作用点
さて、イナビルはインフルエンザウイルスの感染・増殖・放出、どの段階に作用するのでしょうか。
答えは、放出段階です。
イナビルは、インフルエンザウイルスと宿主細胞の結合を切断するときに用いる、ウイルス表面に存在するノイラミニダーゼ(NA)と結合することで、切断できないようにします。
すると、ウイルス放出が阻止されるので、結果的にウイルスの増殖を阻むことができます。
もうちょっと詳しく説明すると、イナビルの有効成分である、ラニナミビルオクタン酸エステルは、細胞に取り込まれたのちに、ゴルジ体というたんぱく質の加工・成熟をする器官に取り込まれ、活性体のラニナミビルになります。
ラニナミビルは水溶性なので、ゴルジ体から外に出ずらくなるため、ゴルジ体にとどまります。
そこに、インフルエンザウイルスの殻にあるノイラミニダーゼ(NA)がやってきて、成熟が行われる際に、ラニナミビルが結合し、NAの効力をなくします。
イナビルっていつ吸えばいいの?
イナビルはこのように増殖をさせないようにする薬なのですが、ウイルスを直接殺すことはできないということがお分かりいただけたかと思います。
つまり、増殖しきってしまったウイルスに対しては、あまり効果を発揮しません。
いままさに、増えようとしているときに、最大の効果を得ることができます。
なので、インフルエンザ確定したらすぐに使用するのが大事です。
ただ、インフルエンザの検査で陽性とでるのが、罹患から24時間くらい後といわれているので、あまり早く病院行っても、陽性ってでないのが、難しいところです。
イナビルの用法・用量
【用 法 ・ 用 量】
治療に用いる場合
成人:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。
小児:10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。
10歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。予防に用いる場合
成人:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。また、20mgを 1日1回、2日間吸入投与することもできる。
小児:10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。
10歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。また、20mgを1日1回、2日間吸入投与することもできる。
引用:イナビル 添付文書
まず治療に用いる場合は、成人であればイナビル2キット分吸入する必要があります。10歳以上であれば、成人と同じ量で、それ未満であれば1キットの服用です。
1回ぽっきり吸入すればよいので、とても楽な半面、吸入をしくじるとまったく吸えなかったという残念な事態になってしまいます。
イナビルの吸入について
イナビルは単回の吸入で効果を発揮する薬ですが、飲み薬や塗り薬と違って、吸入は経験がないなーという方も大勢いらっしゃいます。
ミスってしまってはもったいないので、吸入の仕方をざっくり説明します。
吸入の流れはこちら!
準備段階
- アルミ袋を開け、本体を取り出します。
- 粉がキット内部で舞っているので、机などで数回とんとんと叩きます。このとき、薬剤トレーはスライドさせないでください。粉が机に落ちます。
吸入段階
- 薬剤トレーの①番側を押してスライドさせます。
- 容器をくわえる前に、しっかり息を吐き出してください。息吐かないと吸えないですから
- 容器を持つ時に、底に空気穴があるので、ふさがないようにもって、くわえて【すーーーーっ】と3秒くらい吸ってください。また、このとき下向いてではなく、上体を起こしてください。
- 吸い終わったら、容器をくわえるのを止め、息を2~3秒止めてください。
- その後、息をゆっくりと吐き出してください。
これが1セットの流れです。
この後、薬剤トレー②番側を押してスライドさせて同じように吸入して、吸い残しがあるともったいないので、再度①番側、②番側を吸うとよいでしょう。
処方が2キットになっていたら、このサイクルをもう1回です。
私が服薬指導するときには、この4つを強調してお伝えしてます。
- 吸うときに、下向いたままだと粉が入ってこないので、上体を起こす
- 容器をくわえたら、息をふかない
- 底の空気穴をふさがない
- 吸い終わったら、苦しいけど息を2~3秒止める
薬局によっては、薬局で吸っていかれますかーと提案してくれるので、薬剤師の指示通りのほうが失敗はしないかと思われます。
イナビルの副作用・注意点
下痢、めまい、悪心、蕁麻疹といった副作用が報告されています。
吸入して著しい体調悪化があれば、医師に相談するようにしましょう。
また、イナビルは、乳蛋白を含む乳糖水和物を含んでいるので、乳製品に対してアレルギーを有している方は、吸入に注意が必要です。
イナビルと一緒に服用するのを注意したい薬
2017年9月現在イナビル使用時に注意が必要な薬はありません。
まとめ
イナビルは、有効成分ラニナミビルオクタン酸エステルのインフルエンザA型、B型の治療薬です。単回の吸入使用で効果を発揮します。
予防でも用いることがありますが、そのときは保険適用とはならず、全額自腹となります。
インフルエンザウイルスの増殖を食い止める薬なので、増殖しきってからの使用はあまり効果を得ることができません。
インフルエンザの方と接触した、体調が悪いといったことがあれば、すぐに医師受診することが、インフルエンザを早く治す鍵です。
吸入に際しては、いくつか注意が必要なので、よく薬剤師の指導を聞いておいてください。吸入の時の注意点はこちら⇒イナビルの吸入について
使用に際しては、医師の指示通りに使用してください。
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