はじめに
コンサータは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の治療に用いられる薬です。
以前は子供のADHDのみに用いることがでていましたが、現在は大人のADHDにも用いることができるようになっています。
今回はそんな、コンサータについての効果効能・副作用や注意点について紹介していきます。
目次
コンサータってどんな薬?
コンサータって何の病気に使えるの?
コンサータってどうやって効くの?
コンサータの一般的な使う量と回数
コンサータの副作用
コンサータで気を付けることは?
コンサータの市販薬(OTC)ってあるの?
まとめ
関連する薬
コンサータってどんな薬?
コンサータは、有効成分がメチルフェニデートの注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療に用いられる薬です。
日本では、18mg・27mgが2007年12月に、36mgが2014年5月に販売開始されました。
コンサータの特徴として、錠剤に浸透圧を利用した放出制御システム(OROS)が採用されており、長時間同じ濃度の薬効成分を放出できるように工夫されています。
それにより、基本的な使用量を1日1回にすることが出来ています。
飲む回数を減らすことは、飲み忘れの可能性を減らすことにもつながるので、正しい薬物治療につながります。
【効 能・効 果】
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)《効能・効果に関連する使用上の注意》
1)6歳未満の幼児における有効性及び安全性は確立していない。
2)AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM*)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。
*Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders
引用:コンサータ 添付文書
米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)とは
DSMとは、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略で、アメリカ精神医学会が発行している精神障害を診断するときの基準を提示したものです。
この症状がどのくらい続いたらこの病気に該当するという診断基準が定義されています。
こういった診断基準がないと、診察した医師の主観の評価のみで病気が決定することとなり、他の医師との診断にずれが生じてしまい、病気の適切な評価や複数の医療機関での治療に関するデータ比較ができなくなってしまいます。
そうした問題を解消すべく、DSMという基準が策定されました。
日本でも準拠しており、精神疾患の診断に用いられています。
コンサータって何の病気に使えるの?
コンサータは注意欠陥/多動性障害(AD/HD)に用いられます。
ADHDは近年テレビCMも多くされており、広く認知されているかと思います。
ADHDは、多動性・衝動・不注意といった症状が特徴です。
具体的な症状としては以下があります。(こどもの場合)
多動性の症状
- 授業中、静かに椅子に座っていることができない
- 映画館や公共交通機関などで、静かにしてることができない
衝動性の症状
- 店で欲しいものがあると、大騒ぎする・床に寝転がってだだをこねる
- 思ったことをすぐ口にだしてしまい、会話がなりたたないことがある
不注意の症状
- なくし物・忘れ物が多い
- 不注意なミスが多い
こどものADHDの有病率は5%前後であり、稀というわけではありません。
また、成長してもADHDの症状をかかえていたり、大人になってからADHDと診断されるケースもあり、子供だけの病気というわけではありません。
ADHDの原因は残念ながら、今日でも明確には特定されていません。
おそらくそうだろうと考えられているのが、脳の前頭前野を中心とした脳の働きに不具合がでているから、というものです。
前頭前野は、自分の注意や行動を司っている部分であり、そこの部分の神経伝達の働きが弱いため、ADHDの症状がでるのではないかと考えられています。
細かく言えば、2つの物質が関与していると考えられています。
一つはノルアドレナリン。
ノルアドレナリンは脳を活性化する効果があり、その放出がうまくいかないために認知機能に支障をきたしているのではないか。
もう一つがドパミン。
ドパミンは活性化しすぎた脳を抑制する作用をもちます。
この抑制がうまくいかないので、衝動性や多動性が生まれるのではないか。
と現在は考えられています。
神経伝達について補足ですが、神経伝達は神経細胞から神経細胞に信号が送られることによって伝わります。
そのとき、神経細胞間をつなぐのが、ドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質です。
神経伝達物質は、神経細胞の軸索終末より放出され、隣の神経細胞に到達し、新たな信号を生み出します。
それが順繰りにつながっていくのが、神経伝達です。
どうして神経伝達の働きが弱いの?
神経伝達の弱い理由として考えられているのが、こちらの2つです。
※まだ、解明されていない部分なので、別の理由の可能性もあります。
- 放出される神経伝達物質の量が少ない
- 神経細胞軸索終末に回収される神経伝達物質の量が多い
神経伝達物質は、放出された後、シナプス間隙にほんの少しの時間とどまり、神経細胞軸索終末にあるトランスポーター(生体内にある物質などを細胞内や外に輸送するたんぱく質)によって、回収されます。
一部は、隣の神経細胞に到達して、次のシナプス伝達信号を発火させます。
なので、そもそも放出される神経伝達物質が少なければ、隣の神経細胞に到達する神経伝達物質の量も少なくなり、伝達が弱くなります。
また、トランスポーターの働きが強ければ、すぐに回収されてしまい、やはり隣の神経細胞に到達する神経伝達物質の量も少なくなってしまいます。
コンサータってどうやって効くの?
コンサータの有効成分メチルフェニデートは、ドパミン及びノルアドレナリントランスポーターに結合することで、神経細胞末端へのそれらの物質再取り込みを抑制することで、シナプス間隙に存在するドパミンとノルアドレナリンの濃度を高めて、神経系の機能亢進するものと考えられています。
ですが。。。
まだ、残念ながら病気の原因がまだ定かではないので、ドパミンとノルアドレナリンのシナプス間隙濃度を上げることが、どうしてADHDに効果を発揮するのかは、まだ詳細まで分かっていません。
コンサータの一般的な使う量と回数
【用 法・用 量】
18歳未満の患者:通常、18歳未満の患者にはメチルフェニデート塩酸塩として18mgを初回用量、18~45mgを維持用量として、1日1回朝経口投与する。
増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。なお、症状により適宜増減する。ただし、1日用量は54mgを超えないこと。18歳以上の患者:通常、18歳以上の患者にはメチルフェニデート塩酸塩として18mgを初回用量として、1日1回朝経口投与する。
増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。なお、症状により適宜増減する。ただし、1日用量は72mgを超えないこと。《用法・用量に関連する使用上の注意》
1)本剤は中枢神経刺激作用を有し、その作用は服用後12時間持続するため、就寝時間等を考慮し、午後の服用は避けること。
2)初回用量
本剤投与前に他のメチルフェニデート塩酸塩製剤を服用している場合には、その用法・用量を考慮し、本剤の初回用量を18歳未満の患者では18~45mg、18歳以上の患者では18~72mgの範囲で決定する。ただし、本剤若しくは他のメチルフェニデート塩酸塩製剤の服用を1ヵ月以上休薬した後に本剤を服用する場合は、18mgを初回用量とすること。
3)本剤は徐放性製剤であるため分割して投与することは適切でなく、本剤は18mg錠、27mg錠及び36mg錠の3種類のみで18mgが最小単位であるため、9mg単位の増減量が必要な場合には錠剤の種類を変更して投与すること。
引用:コンサータ 添付文書
コンサータは症状に合わせて使用量を変える薬です。
最初は少なく、徐々に増やして最適な量をみつけ、その量を維持します。
症状や年齢、そのほかもろもろの理由によって医師が判断するので、医師の指示した量をきちんと服用するようにしましょう。
中枢神経を刺激する薬で、12時間程度効果が持続してしまうので、午後服用すると寝付きが悪くなるなどの副作用がでてしまう可能性があります。
そのため、午前中に服用する必要があります。そのため、基本的には朝に服用することとされています。
※生活週間その他要因で午後服用の可能性もあります。医師の指示に従ってください。
コンサータの副作用
コンサータの副作用としてよく報告されているのは、食欲低下・不眠・動悸・頻脈・頭痛・腹痛・悪心などです。
食欲低下は朝服用したとすると、血中の薬量が最大になる昼くらいに最も生じる可能性が高くなります。
間食をするなどして、栄養補給するとよいでしょう。
朝の服用を早めにするなどすると、昼食事の食欲低下は解消される可能性があるので、試してみてください。
不眠症については、コンサータの覚醒作用によるもので、寝付きが悪くなるとされています。
これも、朝の服用をはやめにすることで、夜間の薬濃度をへらすことができ、寝付きの悪さも解消される可能性がありますので、試してみてください。
動悸や頻脈の症状を感じたら、医師に相談して対応方法を聞いてください。
その他、体調悪化や違和感、疑問がありましたら、医師に相談するようにしてください。
コンサータで気を付けることは?
粉砕・噛み砕いての服用はダメ
コンサータは、OROSと呼ばれる、少しづつ有効成分が放出されて、長い時間作用を発揮する特殊な錠剤となっています。
粉砕したりかみくだいてしまうと、この仕組みが壊れてしまい一気に薬物が放出されてしまい危険です。
お子さんが服用しているときは、噛み砕いていないかどうかチェックするとよいでしょう。
飲み忘れ・自己判断の注意はNG
飲み忘れることで、薬の効果がなくなってしまい症状がでる可能性があります。
飲み忘れないようにしましょう。特に子供が服用する場合は、管理が正しくできない可能性があるので、保護者が管理して、飲んだ??等の確認をするようにしましょう。
ですが、飲み忘れてしまうこともあるかと思います。
コンサータは基本的に午前中に服用しなくてはいけないので、午後に入ってしまった場合は服用を控えてもよいかと思います。
飲み忘れ場合の対応については医師の考え方もあるので、事前に医師や薬剤師に確認しておくとよいでしょう。
自己判断で中止してしまうと、症状がでてくる上、医師が病状を管理できなくなる可能性があります。
心配な点・服用したくない点がある場合は、きちんと医師に相談して上で、医師とすりあわせするようにしてください。
飲んではいけない病気や一緒に飲んではいけない薬
コンサータを服用してはいけない病気や一緒に服用してはいけない薬があります。
他に病院に行っている場合は、隠さず医師に伝えるようにしてください。
また、服用している薬はおくすり手帳などを活用してひとまとめにしておき、医師の診察時や薬局で提示するようにしてください。
- 過度の不安、緊張、興奮性のある患者
- 緑内障
- 甲状腺機能亢進
- 不整頻拍、狭心症
- 運動性チック
- 重症うつ病
- 褐色細胞腫
- モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤を投与中又は投与中止後14日以内の患者
- セレギリン(商品名:エフピー)➙セレギリンの効果を増大させ、高血圧が起こる可能性があるため。
ここに挙げた病気・薬以外にも注意が必要な場合があるので、医師に過去の病気・現在罹っている病気・服用している薬は適宜報告するようにしてください。
どの医師でも処方できるわけではない&どの薬局でももらえるわけではない
コンサータは、適切に使用することが求められる薬なので、厳密に流通管理がされています。
発行する医師および調剤する薬局の責任者はeラーニング(オンラインで受講できる講義のこと)を受講する必要があります。
そのeラーニングを受講後、申請すると許可がおり、そこではじめて医師が処方してもOKとなり、薬局も調剤してOKとなります。
なので、コンサータの処方せんを許可が下りていない薬局に持ち込んだとしても、調剤することができません。
病院の前にある薬局であれば、その病院勤務医師がコンサータを処方することがわかっていれば、事前に薬局も許可をとってあるはずなので、そちらでもらうとよいでしょう。
他の薬局でもらいたい場合は、無駄足にならないように電話でコンサータ調剤できるか確認するとよいでしょう。
コンサータの市販薬(OTC)ってあるの?
コンサータはOTCでは販売されていません。
医師の処方が必要な薬です。
まとめ
コンサータは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の治療薬です。
有効成分はメチルフェニデートで、神経細胞末端に存在するドパミン及びノルアドレナリントランスポーターに結合することで、シナプス間隙のドパミンとノルアドレナリンの再取り込みを抑制して、それらの濃度を上げ、神経伝達を活性化する効果があります。
ADHDは、ドパミンとノルアドレナリンの量が少ないことで、前頭前野の動きが弱くなっていると考えられているので、メチルフェニデートでそれを打ち消すことができると考えられています。
使用に際しては、医師の指示通りに正しく服用するようにしてください。
関連する薬
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の薬
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