【バイアスピリン(アスピリン腸溶錠)】って?効果効能・副作用を紹介!

はじめに

バイアスピリンは血液を固まりにくくして、血栓や塞栓を作りにくくする効果を発揮する薬です。
川崎病の症状緩和、心臓関連の合併症の予防目的で用いられることもあります。

今回は、バイスピリンについて、その効果効能、副作用や注意点について紹介します。

目次

バイアスピリンってどんな薬?
バイアスピリンって何の病気に使えるの?
バイアスピリンってどうやって効くの?
バイアスピリンの一般的な使う量と回数
バイアスピリンの副作用
バイアスピリンで気を付けることは?
バイアスピリンのジェネリック(GE)ってあるの?
バイアスピリンの市販薬(OTC)ってあるの?
まとめ
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バイアスピリンってどんな薬?

バイアスピリンは、血液を固まりにくくする薬です。
狭心症や心筋梗塞の既往歴がある方・虚血性脳血管障害がある方に用いられ、脳梗塞・心筋梗塞の予防に用いられます。

他にも、冠動脈バイパス術や経皮経管冠動脈形成術の手術を受けた方の、術部に血栓が作られるのを抑制するために用いられたりします。

有効成分はアスピリン(アセチルサリチル酸)であり、副作用である胃に対する障害(胃出血や胃十二指腸潰瘍など)を抑制するため、腸で溶けるように設計されています。
※急性期(急いで使わなくては行けない場合)は、医師の指示のもと噛み砕いて服用する場合があります。

日本では、2001年1月に販売が開始され、比較的安価で脳梗塞・心筋梗塞の予防を行えるため、広く用いられています。

効能又は効果
●下記疾患における血栓・塞栓形成の抑制
狭心症(慢性安定狭心症,不安定狭心症)
心筋梗塞
虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA),脳梗塞)
●冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制
●川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)
引用:バイアスピリン 添付文書

バイアスピリンって何の病気に使えるの?

狭心症

全身に血液を循環させる機能を担う『心臓』ですが、筋肉でできており、動くにはエネルギーが必要です。
このエネルギーを補給している経路が、心臓をとりまく『冠動脈』となります。

冠動脈にアテローム(コレステロールが固まり細くなっている箇所)が生じ、血液がそこで固まり一時的に詰まると、虚血となり、胸の痛みや圧迫感を感じることがあります。
これが狭心症です。
大体、15分以内には緩和する場合が多いです。

心筋梗塞

上記の狭心症と似ていますが、こちらは完全に冠動脈が詰まり閉塞してしまった状態です。
すると、血液の供給がなくなった心筋細胞が壊死してしまい、症状が長く続くことになります。

虚血性脳血管障害

脳の血管にアテロームが生じており、狭くなっている箇所に血栓が生じ、もしくは心臓などその他の臓器で作られた血栓が血流とともに飛び、狭くなっている箇所に詰まることで、血液の供給ができなくなった障害です。
運動障害、嚥下障害、言語障害、記憶障害など、詰まった箇所に応じて症状が生じ、最悪死に至ります。

冠動脈バイパス術(CABG)

閉塞しかけている冠動脈の先の部分は、閉塞してしまったら壊死してしまうことが予想されます。
なので、その壊死が予想されている部位に、栄養を供給し続けられるように、閉塞している箇所を迂回して、別の動脈ルートを確保する手術です。

足の動脈がよく利用され、その動脈を心臓に継ぎ変えることで、心筋梗塞を未然に防ぐ効果をもたらします。

経皮経管冠動脈形成術(PTCA)

経皮的冠動脈インターベーションとも呼ばれ、足や手の動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を通し、心臓冠動脈の細くなってしまった部位まで到達させ、バルーンやステントを留置する方法です。
細くなった血管を、内側から広げるという手術になります。

バルーンは、その名前の通り風船状をしており、狭くなった箇所で膨らますことで、内側から細くなった部分を押し広げ、ステントは再び細くならないように、メッシュ状の金属の筒を留置する方法となります。

川崎病

原因はまだはっきりとは分かっていませんが、細菌やウイルスに感染したときにそれらを排除しようとする免疫反応が強くですぎてしまうことで、血管を傷つけてしまい、もろくなってしまう病気とされています。

その結果、心臓周囲の冠動脈が詰まる、心筋梗塞を引き起こす可能性が高くなります。

全ての病気・症状に共通することとしては、血液が固まりにくくすれば、心筋梗塞や脳梗塞といった病気の可能性を低くすることができるという点です。

バイアスピリンってどうやって効くの?

アスピリンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)の機能を抑制し、血小板凝集抑制作用(血を固まりにくくする作用)を示します。

細かく説明していきましょう。
血小板を凝集させる因子として、血小板に存在するトロンボキサン(TXAがあります。

トロンボキサンはエンドペルオキシドから作られるのですが、このエンドペルオキシドはアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用により作られるため、COXの機能を抑制することで、トロンボキサン(TXA)の合成量を減らし、血小板の凝集を抑制する効果、つまり血液を固まりにくくする効果を発揮します。

とまあ、簡単に言うと上記で終わりなのですが、この作用を発揮するためには、少し解決しなくてはいけない問題が裏で発生しています。

実は、COXの作用によって作られる物質のなかに、血小板の凝集を抑制する因子もあります。
プロスタサイクリン(PGIと呼ばれるこの因子は、血管内皮細胞で多く作られます。

つまりアスピリンを投与すると、COXが阻害され、プロスタサイクリンの合成も抑えられるので、血小板の凝集抑制効果を抑制(紛らわしい)するため、トロンボキサンの合成量を低下させたとしても、血が固まりにくくなるという作用が生まれません。
トロンボキサンの合成量を低下とプロスタサイクリン(PGI)の合成量低下が、打ち消しあってしまうのです。

結局のところ、血を固まりにくくするためには、プロスタサイクリン(PGI)の量は変えずに、トロンボキサン(TXA)の量を減らすことができればよいということになります。

この問題を解決する方法が、少ない量のアスピリンを投与するということでした。
アスピリンは、COXを非可逆的に機能を抑えます。もとの機能には戻らないということです。

血小板は核(遺伝子の保管場所)が存在しないため、一度COXなどの酵素をこわされてしまうと、再び作りだすことができません。
一方で、血管内皮細胞は核が存在するので、COXをこわされたとしても次のCOXが作られるため、プロスタサイクリンを再び作りだすことができるようになります。

つまり、血管内皮細胞における、プロスタサイクリンの合成は高用量で絶えずCOXをつぶされる状況ではない限り、多少抑制されるものの、0にはならないということになります。
一方で、血小板におけるトロンボキサンの合成は、低用量であっても一度COXをつぶされると、その血小板の寿命中(7日間程度)は復活しないので、トロンボキサン合成量をかなり抑制することができるということになります。

このように、アスピリンの量が少ないときは抗凝集作用を示し、高用量だと凝集作用を示すため、『アスピリンジレンマ』と呼ばれる問題です。
※ここまで説明しておいてなんですが、近年アスピリンジレンマは本当に存在するのかどうか疑わしくなってきています笑

とにもかくにも、アスピリンを低用量継続して服用することで、血小板凝集抑制、つまり血が固まりにくくなるのは確かなのです。

アスピリンの副作用の話も触れておくと、シクロオキシゲナーゼ(COX)は、胃腸において、粘膜を保護する成分であるプロスタグランジンEやプロスタグランジンIの合成も抑制してしまいます。
その結果、胃潰瘍をはじめとする、消化器の潰瘍・障害を引き起こしてしまいます。

そのため、バイアスピリンは腸溶錠を採用しており、胃に対する負担を少しでも軽減できるように腸で溶けるようになっています。

とはいえ、腸周辺の潰瘍・障害の可能性もありますし、胃の潰瘍・障害もゼロではないので、違和感あれば受診することをお勧めします。

バイアスピリンの一般的な使う量と回数

用法及び用量
●狭心症(慢性安定狭心症,不安定狭心症),心筋梗塞,虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA),脳梗塞)における血栓・塞栓形成の抑制,冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制に使用する場合
通常,成人にはアスピリンとして100mgを1日1回経口投与する.
なお,症状により1回300mgまで増量できる.

●川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)に使用する場合
急性期有熱期間は,アスピリンとして1日体重1kgあたり30~50mgを3回に分けて経口投与する.解熱後の回復期から慢性期は,アスピリンとして1日体重1kgあたり3~5mgを1回経口投与する.
なお,症状に応じて適宜増減する.

用法及び用量に関連する使用上の注意
1.急性心筋梗塞ならびに脳梗塞急性期の初期治療において,抗血小板作用の発現を急ぐ場合には,初回投与時には本剤をすりつぶしたり,かみ砕いて服用すること.
2.心筋梗塞患者及び経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行患者の初期治療においては,常用量の数倍を投与することが望ましい.
3.原則として川崎病の診断がつき次第,投与を開始することが望ましい.
4.川崎病では発症後数ヵ月間,血小板凝集能が亢進しているので,川崎病の回復期において,本剤を発症後2~3ヵ月間投与し,その後断層心エコー図等の冠動脈検査で冠動脈障害が認められない場合には,本剤の投与を中止すること.冠動脈瘤を形成した症例では,冠動脈瘤の退縮が確認される時期まで投与を継続することが望ましい.
5.川崎病の治療において,低用量では十分な血小板機能の抑制が認められない場合もあるため,適宜,血小板凝集能の測定等を考慮すること.
引用:バイアスピリン 添付文書

狭心症をはじめとする、血管の血栓生成・閉塞抑制に用いる場合は、通常1日1回 アスピリンとして100mg(バイアスピリン錠 1錠分)を服用します。
ただし、症状により、300mg分まで増やして様子をみます。
※ちなみに、消炎鎮痛(炎症や痛みを抑える)目的で用いる場合は、アスピリンとして1.0g~4.5gなので、低用量ということが分かります。

急性心筋梗塞や脳梗塞の急性期に急いで血液凝固抑制作用を期待して用いる場合は、噛み砕いて服用することとされています。
腸溶のコーティーングを破壊してから服用することで、そのままの状態よりも早く吸収されることが期待できます。
胃への負担は大きくなるものの、急ぎならば仕方ないということです。

医師の指示と異なる場合は医師の指示を優先するようにしてください。

バイアスピリンの副作用

バイアスピリンの副作用のうち、主に報告されているのは、胃腸障害・吐き気・腹痛などの消化器症状、蕁麻疹といった過敏症症状、そう痒感・皮疹などの皮膚症状などです。
服用していて、体調悪化や違和感を感じた場合は、医師に報告・相談するようにしてください。

自己判断で中止せず、気になることあれば、医師に相談しましょう。

バイアスピリンで気を付けることは?

継続的に服用すること

バイアスピリンは継続的に服用することで、血栓・塞栓ができるのを防ぐ効果を発揮します。
医師の指示どおりに服用し、自己判断で中止することのにようにしてください。

手術時の投薬中止の可能性あり

血液凝集抑制効果のある薬は、手術を実施する場合には、服用を中止して準備をする場合があります。
現在服用中の薬は、お薬手帳で管理し、医師・薬剤師に確認してもらうことをおすすめします。

また、歯科治療においても注意が必要な場合があるので、歯科医師にもお薬手帳を確認してもらうようにしてください。

医師の指示がある場合を除き、噛み砕かないこと

噛み砕いて服用すると、腸溶コーティングが剥がれ、胃に負担がかかります。
医師から急いで効果を発現させたいから噛み砕いて!といった指示がない限り、そのまま服用してください。

併用に注意する薬が複数あり

一緒に服用することで、バイアスピリンの効果が増強されたり、減弱されたり、もしくは、一緒に服用した薬の効果が増強されたり、減弱されたりする可能性があります。
お薬手帳で現在服用中の薬は適切に管理して、医師や薬剤師に適宜確認してもらうようにしてください。

アンスピリン喘息の方をはじめ、服用できない方あり

アスピリンを始めとする、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)により喘息が誘発されるアスピリン喘息の方や、消化性潰瘍のある患者、出産予定日12週以内の妊婦などは服用することができません。
他の病院で診断された病気を含め、既往歴はきちんと医師に申告するようにしてください。

バイアスピリンのジェネリック(GE)ってあるの?

バイアスピリン自体ジェネリックです。
他にも、ゼンアスピリン・アスピリン錠「メーカー名」・アスピリン腸溶錠「メーカー名」の名前で、他のメーカーからジェネリックが販売されています。

バイアスピリンの市販薬(OTC)ってあるの?

消炎鎮痛作用を期待して用いられるアスピリンは販売されているものの、血栓・塞栓予防を期待して用いられるアスピリンは販売されていません。
診断や経過観察に注意が必要なので、医師の管理の元での服用が必要となるためです。

まとめ

バイアスピリンは、有効成分アスピリン(アセチルサリチル酸)の、血液を固まりにくくして、血栓や塞栓を作りにくくする効果を発揮する薬です。
シクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを抑えることで、血小板凝集促進因子であるトロンボキサン(TXA)の血小板での合成を抑制することで、血液が固まりにくくします。

服用に際しては、医師の指示に従って、飲み忘れなく服用するようにしてください。

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