はじめに
イブランスは、抗悪性腫瘍剤(CDK 4/6阻害剤)の作用をもった薬です。
有効成分は、パルボシクリブで、2017年9月に製造販売承認が日本でおりました。
今回は、イブランスについてその効果効能と副作用・注意点について紹介して行きたいと思います。
目次
イブランスってどんな薬?
イブランスってどうやって効くの?
イブランスの用法・用量
イブランスの副作用
イブランスの注意点
まとめ
イブランスってどんな薬?
イブランスは、CDK4/6阻害作用をもつ抗がん剤です。
手術不能又は再発乳癌に用いる抗がん剤で、有効成分はパルボシクリブです。
効能又は効果
手術不能又は再発乳癌効能又は効果に関連する使用上の注意
1.本剤の手術の補助療法としての有効性及び安全性は確立していない。
2.臨床試験に組み入れられた患者のホルモン受容体及びHER2の発現状況等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
引用:イブランス 添付文書
イブランスは、乳がんに用いる薬です。
主にHR陽性かつHER2陰性の乳がんに用いられます。
乳がんにも様々な種類があり、一つの分け方が発現している受容体による分類方法があります。
HRとはホルモン受容体のことを指します。
また、HER2とは、ヒトEGFR関連物質2 human EGFR-related 2 の略で、細胞表面に発現する受容体型チロシンキナーゼを指します。
イブランスは、HRは発現しているけども、HER2は発現していない乳がんに用いられます。
正しくは、HER2陽性の乳がんにも効くかもしれないけど、現在試験が進行中であり不明というのが正しいです。
筆者の憶測ですが、HER2陽性乳がんにはハーセプチン、パージェタという薬がすでにあるので、まだ抑えることができていないHER2陰性という部分の市場を狙いにいったのではないかと思います。
イブランスってどうやって効くの?
イブランスの有効成分パルボシクリブは、CDK4/6阻害作用を有します。
CDKとは、サイクリン依存性キナーゼ(Cyclin Dependent Kinase)の略であり、CDKとサイクリンDは細胞の分裂周期を制御する物質であることがわかっています。
細胞の分裂周期は、G0期→G1期→S期→G2期→M期→G0期と回っていきます。
CDK4/6-サイクリンD複合体は、G1期→S期に移行するように仕向ける作用を有しています。
乳がんを始めとして、がん細胞では、CDK4/6が過剰に発現しており、細胞分裂のコントロールが聞かなくなっており、細胞増殖が過剰に行われています。
パルボシクリブは、CDK4/6の機能を停止させる作用を有しているので、過剰に発現してしまうことで細胞増殖が止まらない状態になっている乳がん細胞の分裂を抑える働きを通して、抗腫瘍活性を持ちます。
イブランスの用法・用量
用法及び用量
内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはパルボシクリブとして1日1回125mgを3週間連続して食後に経口投与し、その後1週間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。用法及び用量に関連する使用上の注意
1.併用する内分泌療法剤等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、選択を行うこと。
2.本剤の血中濃度が上昇するとの報告があるため、重度の肝機能障害患者では、減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意すること。
3.副作用があらわれた場合は、以下の基準を考慮して、休薬、減量又は投与を中止すること。なお、本剤は75mg/日未満に減量しないこと。
引用:イブランス 添付文書
イブランスは、1日1回125mgを服用するのを3週間継続した後に、1週間服用を中止するといったサイクルで使用されます。
患者さんの年齢、体調、副作用発現の様子に応じて量はもちろん調節します。
イブランスの副作用
好中球減少症・白血球減少症・脱毛症・疲労・口内炎・悪心・関節痛・貧血・感染症・ほてり・下痢・血小板減少症・無力症・発疹などの副作用が報告されています。
イブランスは、細胞分裂の周期制御因子をブロックする薬なので、細胞分裂が多く生じている組織に多く副作用が生じます。
まず、造血細胞。
日々細胞分裂をして、血球成分を作っているので、その分裂機能が抑制されることにより、好中球減少、白血球減少、血小板減少が生じます。
すると、免疫システムが弱くなるので、口内炎、感染症、発疹などが生じます。
次に、髪の毛。
髪の毛も成長・維持に細胞分裂が必要となるので、イブランス服用により脱毛が生じてしまいます。
イブランスの注意点
イブランスは抗がん剤であり、作用が強めの薬です。
なので、医師の指示どおりの服用をすることが大事です。
また、飲み忘れてしまうと効果が減弱してしまうので、飲み忘れないように、決められた時間に服用するようにしましょう。
また、イブランスには服用してはいけない方がいらっしゃいます。
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.妊婦又は妊娠している可能性のある女性
引用:イブランス 添付文書
まず、イブランス服用して過敏症状がでてしまう方には用いることができません。
次に、妊婦や妊娠している可能性がある女性もNGです。
というのも、催奇形性が認められているためです。
まとめ
イブランスは有効成分パルボシクリブで、手術不能又は再発乳癌に用いられる薬です。
CDK4/6阻害作用を有しており、細胞分裂のG1期→S期への移行を止め、増殖を抑える働きを通して、抗腫瘍活性を有します。
服用に際しては、医師の指示どおりに服用するようにしましょう。
コメント
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イブランスは、CDK4/6を阻害する新規の経口分子標的薬です
抗がん剤ではないと思います
コメントありがとうございます。
CDK、つまりサイクリン依存性キナーゼ阻害作用は、がん細胞の無秩序な増殖を食い止める作用をもちます。
ですので、立派に抗がん剤かと思われます。